「信託」について知ろう Part3

家族信託

信託についての記事を前回、前々回に続き投稿いたします。

最近、耳にすることが増えてきたと感じているのが「家族信託」です。
背景としてあるのが、日本の高齢化と認知症の問題です。
2020年のある推計によると、65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%(約602万人)、つまり、およそ6人に1人が認知症ということです。
超高齢社会ならではの課題がある日本。
今回は、この家族信託とは何なのか?どんなメリットがあるのか?についてみていきたいと思います。

家族信託とは

家族信託とは、自分の老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法となる信託契約です。家族・親族に管理を託すので、高額な報酬が発生しないのが特徴です。
そのため資産家のためのものでなく、誰にでも気軽に利用できる仕組みといわれています。

成年後見制度とはまた違う有利な点もありますので、ケースに合わせて採用、または併用するのが良さそうです。

家族信託の3者構造

家族信託の3者構造は以下のようになります。

  • 委託者(資産を託す人)
    ➡資産を持つ人:親
  • 受託者(資産を託される人)
    ➡管理・運用をする人:子
  • 受益者(財産の利益を受ける人)
    ➡資産を持つ人:親

家族信託の特徴

家族信託は、認知症による資産凍結対策、資産凍結回避の先にある相続税対策や空き家対策、あるいは事業承継対策、共有不動産の塩漬け回避策、親なき後問題への備え・・・など様々なニーズに応えうる「手段」となります。
遺言書以上に幅広い遺産の承継が可能でありますが、家族間でよく話し合い、どのような想いが双方にあるのか確認することが大切です。

【相続時の負担軽減】遺産分割協議が不要に

大きなメリットとして挙げられるのが、家族信託契約により継者を決めておくことで「遺産分割協議」が不要になることです。

遺産分割協議では、相続人全員で話し合い誰が何を相続するのかを決めなくてはいけません。しかし、相続人内で意向が揃わなかったり、相続人の1人が認知症等により話し合いをすることができない、様々なトラブルがある・・・という場合、相続の手続きがスムーズにできなくなり、大変な苦労を伴うことが結構あるためです。

【認知症対策】財産の権利内容を分ける

家族信託は、財産の所有権を以下の二つに分けることができます。

  • 財産から利益を受ける権利
  • 財産を管理運用処分できる権利

そして、後者だけを子どもに渡す、というようなことができる契約です。

どんな時に有効かといいますと、財産の所有者である親が認知症になってしまった場合です。
親が認知症になると、子供でも親の銀行預金を下ろすことができなくなってしまったり、自宅など保有する不動産の売却もできなくなってしまいます。

このように認知症により財産の管理運用ができなくなりますが、あらかじめ信託を活用して権利を分割して渡しておけば、子どもが財産の管理運用処分ができるようになります。
親の介護に加えて、金銭的な問題が出てきたとしても、財産を活用して解決する手助けとなる可能性が広まるわけです。

成年後見制度との違い

いくつか留意点がありますが、例えば家族信託には「身上監護権」が無いということが指摘されます。

これは、判断能力のない本人に代わって住居の確保や契約、介護・福祉施設やリハビリ施設への入退所するための手続きをしたり、医療や入院に関する契約や手続きを行ったりすることが、受託者はできない、という意味です。
一方、成年後見人ですとこれらができます。

このように家族信託はあくまでも、財産管理のための制度です。入居した施設のお金を信託された財産の中から支払うことはできますが、委託者の代理人として入居契約をする権限はありません。
こういったことから、専門家と相談し、成年後見制度との併用なども検討する必要があります。

まとめ

今回は、家族信託についての基本的な点、活用事例について一部ではありますが取り上げてみました。
徐々に浸透してきている家族信託ですが、まだまだ実務に精通した専門家が少ないのが現状です。
そのため、具体的に家族信託を検討する際には、書籍やインターネットの情報だけで家族信託を実行しようとせずに、家族信託についてしっかりとした見識と実務経験がある専門家にまずは相談するようにしてみましょう。