2001年10月に確定拠出年金がスタートしてから20年。
高齢化の進行など環境の変化に伴い、確定拠出年金制度の見直しが重ねられています。
2022年に改正される項目について、3回シリーズで解説していきましょう。
(上)加入できる年齢が拡大される
(中)受給開始時期が75歳に延長される
(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる
第2回目は、『(中)受給開始時期が75歳に延長される』です。
2022年の確定拠出年金の改正点(上)加入できる年齢が拡大される 2022年の確定拠出年金の改正点(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる目次
4月から、公的年金の受給開始時期が75歳までに拡大
現在、公的年金の老齢給付金は、原則は65歳からの受け取り始めとなっていますが、本人の意思により、受取開始時期は60歳から70歳までの間で選択できます。
受取開始時期を早めるのは「繰上げ」、遅らせるのは「繰下げ」で、1ヵ月単位で決められます。
繰上受給は60歳からで、年金を早く受け取る分、1カ月につき0.5%が減額されます。
60歳の誕生月(誕生日が1日の人は前月)に手続きをすると、30%(0.5×12ヵ月×5年)の減額です。
これに対し、繰下げは1カ月につき0.7%の増額。
70歳0カ月まで繰り下げると42%(0.7×12ヵ月×5年)増えることになります。
この制度が改正され、2022年4月から、繰下げ受給を選べる年齢の上限が75歳に引き上げられます。
繰下げ1ヵ月に対する増額は同じく0.7%で。75歳まで繰下げれば84%の増額率になります。
背景にあるのは、高年齢者が活躍できる場の環境整備です。
働く意欲がある高年齢の就労機会を設け、公的年金の老齢給付金を受け取る年齢の選択肢を広げようということです。
確定拠出年金制度でも受取開始は75歳までの選択に
公的年金の改正に伴い、確定拠出年金でも、企業型確定拠出年金(企業型DC)・個人型確定拠出年金(iDeCo)ともに、老齢給付金の受取開始時期が75歳までに拡大されます。
現行では、老齢給付金は60歳から70歳までの間に受取り始めることとなっています。
1952年4月1日以前に生まれた人は、2022年4月1日より前に70歳に達しているため、現行制度の上限70歳までの受取開始となります。
50歳前後の人は、改めてiDeCoの検討を
今年の改正は、特に50歳前後の世代の方に注目して頂きたいです。
「老後資金2000万円問題」が話題になった頃から、iDeCoへの関心が高まるようになりました。
けれど、この世代の方々は、いまいちiDeCoに踏み切れない理由を抱えています。
それは、「60歳までもうすぐ」という意識。
子どもの教育費にそろそろメドが立ち、自分たちの老後の生活が気になり始め、重い腰を上げてiDeCoの検討をしたものの、「60歳まで掛金を払っても、金額はたかが知れている」と。
iDeCoの掛金は、国民年金保険の立場や勤務先の年金制度によって、上限額が決められています。
自営業などの第1号被保険者(年額81.6万円まで)でない限り、年額14.4万円~27.6万円です。
50歳前後でiDeCoを始めたとしても、長い老後の生活に役立つほどの資金には程遠く、「税金面では有利かもしれないけれど、老後の資金としては物足りないよね」という方は少なくなりません。
私は、改正を機に、これらの方々のうち一定数がiDeCoに加入するのではないかと見ています。
あくまでも個人のライフプランによりますが、確定拠出年金に加入できる期間が長くなり、その分、運用資産が増えます。
さらに受取開始時期を遅らせれば、運用できる期間も長くなります。
受取開始を遅らせる場合の注意点
リタイアして掛金を払わなくなり、受取開始まで年金資産を運用する間は、「運用指図者」となります。
この間も年金資産は、運用の良しあしによって資産額が増減します。
この期間は一般的に、数年後の受取開始を念頭に、徐々にリスクを抑えながら運用すると考えられます。
そうするとこの時期のリターンは多くを望めません。
そのような中でも、手数料はかかります。
掛金を払わないので、運用資産から手数料が引かれます。
ローリスクローリターンの運用に切り替えてからの手数料負担は、相対的に重くなります。
確定拠出年金の受取り方法や受取時の税金制度についても、注意すべき点はありますが、本筋から外れますので今回は割愛します。
また、今後も税制や制度の変更などもあり得ます。
実際に受け取る場合の時期や方法などの判断に際しては、税理士や税務署に確認すると良いでしょう。
まとめ
2022年4月から、公的年金の老齢給付金を繰り下げて受け取り始める年齢が、75歳まで延ばされます。
これに伴い、確定拠出年金の老齢給付金も、現行で70歳までの選択で受取れるのに対し、75歳まで選べるようになります。
今年の改正では、確定拠出年金の加入可能年齢が引き上がり、これまで「リタイアまであと数年だから」と確定拠出年金の加入に二の足を踏んでいた人も、改めて検討する余地があるのではないでしょうか。
ただし、注意点も踏まえた検討が必要です。
次回は「(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる」点について、ご紹介します。
2022年の確定拠出年金の改正点(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる【参考サイト】
厚生労働省 確定拠出年金制度「2020年の制度改正」