株&ゴールドに影響するFRBのテーパリングは、お金の蛇口を締め始めること!

今、資産運用マーケットで、ホットな話題が、米国の金融政策の変化。これ、徐々に、緩和から引き締め方向に変わろうとしています。もちろん、株価やゴールドに大きな影響が出ることに。

行き過ぎた金融緩和をテーパリングで引き戻す。

米国のFRBによって、年内に実行される可能性の高い「テーパリング」。これによって、一時的に金価格が下落するリスクがあるため、金投資に興味がある方は必見です。

テーパリングとは、今、金融緩和を止めていく方法の一つで、量的緩和=中央銀行が買い入れていた資産の購入額を減らしていくこと。これによって、中央銀行が例外的に行っていた量的緩和の規模を小さくしていき、金融政策を正常に戻すことになります。

かんたんに言うと、市場にじゃぶじゃぶと流していたお金の量を段階的に減らしていくこと。市場に流れるお金の量が減れば、株や不動産を買うお金も減るので、価格が下がりやすいというのがシンプルな説明。

テーパリング 段階

蛇口を少しだけ締めるテーパリング

といっても、今まで、豊富に流していたお金を一気に止めるのではありません。言ってみれば、水道の栓を少し締めて、蛇口から流れる水の量を減らすだけ。しかし、過去もそうでした。このテーパリングをいつから始めるかFRBが会議(FOMC)で話し合えば、株価や金価格は、一時的に下がる傾向にあります。

景気回復したから金融を引き締める

そもそも、景気や雇用が回復したからこそ、金融政策を変えるわけで、悪いことではありません。ただし、今の株式市場は、中央銀行による買い支えによって、価格が維持されている面があるため、支えを失うと株価が下落するというわけです。そこで、一気に長期金利上昇が起これば、金価格も下落する可能性が出てきます。

また、金融市場は、「噂で買い事実で売れ」という言葉があるように、物事を予測して先を進んでいます。そのため、テーパリングを金融引締の序曲(プレリュード)ととらえます。

すなわち、テーパリングが終われば、次は、利上げ。この利上げが怖い

利上げは、株価・金価格ともにマイナスの影響。そう、先を読む賢い投資家は、序曲が鳴り始めた時点で、トレンドの転換をとらえて、売りに回ります。もし、今以上に値段が上がってもそれは仕方がない。それよりも、ゲームチェンジのファンファーレを逃さない方が大事と考え、株を売り始める人が出てくるため、市場が乱高下しやすくなるのです。

異常な金融緩和から金融正常化へと

量的緩和やゼロ金利政策は、あくまでも異常事態への緊急対応。金融政策としては、きちんと金利のある世界の方が正常。そのため、中央銀行は、景気がよくなれば、金融緩和を引き締め方向に変更します。

金融正常化の流れ。

  1. 経済指標の回復を見て、テーパリングの議論開始⇒イマココ
  2. テーパリング開始
  3. テーパリング終了。中央銀行が過去に買い入れた資産残高を維持
  4. ゼロ金利の維持
  5. 金利を上げる利上げ開始
  6. 資産残高(バランスシート)の縮小

数年かけて、FRBは、この作業を行うことになります。実は、日銀も同じような事をしなければいけないのですが、こちらはいつになることやら。タメ息。

お金を流しすぎるとインフレになる

景気が順調で、利上げに耐えられるようであれば、このプロセスが進むのは速い。もしも、FRBの金融正常化が遅れれば、余ったお金が、モノへと流れ込んで、物価が上昇していくインフレが起きてしまいます。

景気が順調、雇用も順調、インフレ率も高くなった。となれば、FRBも迷いなくテーパリングや金融政策正常化ができるところ。しかし、現実的には、こんな感じで、まだら模様になるのではないかと思います。すなわち、景気はボチボチ。雇用はイマイチ。インフレ率は乱高下。株価は乱高下。残念ながら、悩めるFRBの姿が目に浮かんできます。

バーナンキ・ショック

2008年に起きたリーマン・ショックからの世界経済の危機。この時も、巨大な量的緩和政策が行われ、金融市場と景気を支えました。しかし、この政策、永遠に続けるものではなく、いつか止めなければいけません。そこで、当時のバーナンキFRB議長は、2013年春に、今後、テーパリングを進めていくと発言。それに、びっくりした市場は、株価下落・長期金利上昇という姿を見せました。ちなみに、ゴールドは、それを先取りして早めに下がっていました。おかげで、バーナンキ・ショックという名前がつけられるほど。

テーパリング バーキングショック

金融正常化ができなければ、再び量的緩和が始まる

さて、テーパリングや利上げを行っても、景気が悪くならないというのが、金融正常化の条件です。今、株価や不動産の大幅下落や景気悪化なしで、金融正常化をスムーズにできるという夢のシナリオを市場は、描いています

ゼロ金利までは進めたとしても、金利を上げられるかどうか。それまでに、リーマン・ショックやコロナパンデミックのような異常事態が起きれば、またもや金融緩和に逆戻り。もし、そうなれば、金利を引き下げる余力がないまま、量的緩和に突入してしまいます。

それは、今まで以上に、お金をじゃぶじゃぶと垂れ流すことになってしまいます。量的緩和は、鎮痛薬のようなモノ。頻繁に使っていると効力が下がり、どんどん薬の量が増えていきます。

ということは、お金=通貨の価値がどんどん下がっていき、株やゴールドが上昇していく未来の出来上がりです。

スピードが早くなりすぎて、中央銀行のコントロールは難しくなった。

ITの進化をはじめ、近年の技術進歩のスピードが速いことは、あなたも実感するところでしょう。その分、企業の成長サイクルも速くなっています。そういう点では、現在の世界は、数十年前と比べると、ずいぶんと加速した世界と言えるのではないでしょうか。

ということは、FRBが悠長に、テーパリング~ゼロ金利~利上げと動いている間に、何かが起きる可能性は、ずいぶんと高いと思います。その時、FRBは、利下げという武器を使えるほど、金利を上昇させることができるでしょうか。私は、それができずに、またもや、量的緩和に踏み切る可能性が高いと思います。

だからこそ、銀行や政府と関係のないお金=金投資が大事になってくるのです。