日本ではまだ馴染みの少ない「エンジェル投資」ですが、海外ではベンチャーキャピタルに並んでメジャーな投資法として知られています。
エンジェル投資家とは創業間もない企業に対し資金を供給する富裕な個人のことです。
投資の見返りとして株式や転換社債を受け取ることが一般的となっており、最近ではエンジェル同士でグループを形成し、情報の共有や共同出資を行う動きも見られます。
目次
起業家からの視点
起業、創業して間もないころは事業の夢に向かって邁進していますが、事業を大きく展開していく上で資金が必要です。
とはいっても創業間もないころは将来像に対して確固とした収益を証明することは難しい、したがって銀行や金融機関、ベンチャーキャピタルなどからの融資、借り入れは現実的には難しくなります。
そのような場合の手段としてエンジェル投資家へのアプローチは選択肢の一つとして考える事ができます。
エンジェル投資家は金融機関やベンチャーキャピタルに比べて投入してくれる金額は少ない場合が多いですが、資金以外にも投資家のリソース、人脈を生かしたビジネス面で手助け、経営についてのアドバイス、精神的なサポートなど、起業家を金銭面以外でも応援しようという新しい投資の形を行ってくれるのです。
エンジェル投資家にはもと起業家や実業家が多くいます。
エンジェル投資家の配当の受け取り方の仕組みですが、起業家の事業が成功した場合に「株式」を受け取るなどの方法が多くなっています。
投資家と起業家がどのような契約条件で支援を行う、支援を受けるのかという条件はそれぞれ異なってきます。
投資家は出資をする代わりに、支援した会社の株を取得します。
起業家の事業が計画通り上手く行けば、莫大な利益を得られることになります。
しかし、新規事業を軌道に乗せることは数々の困難が伴いますし、軌道に乗らずそのまま終わってしまう可能性も大いにあるわけです。
エンジェル投資は「失敗するリスク」を覚悟の上で投資、支援する必要があるのです。
具体的なところを見てみますと、エンジェル投資家の支援する金額は500万円〜2,000万円といった少額融資が大半を占めています。
エンジェル投資家は、家族・友人間の融資と、金融機関融資の中間に位置する存在と言えますし、起業家のスタートアップに必要な資金を提供してくれる投資家でもあります。
一方金融機関やベンチャーキャピタルは審査が厳しい分、融資の金額は大きく設定してくれることになります。
ここ数年エンジェル投資という手法の知名度が上がってきた背景にはアメリカの法律改正があります。
2012年までアメリカでは不特定多数のエンジェル投資家を募ることは法律で禁止されていたのですが、オバマ大統領の時代に新しい法律(JOB ACT法)が施行され複数の投資家に向けたベンチャー企業の資金募集を公開することが可能になりました。
ネットで検索してもらえれば出てくるのですが、エンジェル投資家がリストになっているプラットフォームが存在しています。
このエンジェル投資家のリストが載っているプラットフォームの出現で、いままで主流であったベンチャーキャピタルの出番が少なくなり、個人投資家と起業家の結びつきが活発になっています。
細かい管理を必要としないエンジェル投資は起業家にとってもメリットが多くあり、ベンチャーキャピタルにとって大きな脅威になりつつある状況です。
エンジェル投資家の探し方
エンジェル投資家の探し方としては主に3つあります。
- 有名なエンジェル投資家に直接アプローチする
- マッチングサイトによるアプローチ
- セミナーやイベント・コンテストに参加する
その一方でエンジェルとなる投資家の視点から見ると、リスクは高くなりますが、将来どれくらい大きく化けるかわからない事業、人材に対して初期の時点から投資を行う事は非常にワクワクする投資の一つだとも言えます。
リスクが高いとは危険であるという意味ではなくて、将来の振れ幅が大きい、投資に対する見返りが0になる可能性もあるが、成功する際は大きなリターンがあるという意味です。
実際自分で事業を立上げ成功に導き、資金による余裕のある人にとって見れば、単純な資産運用に比べると非常に面白く興味深い投資案件と言えるでしょう。
資金(お金)だけではなく自分の経験値や人脈を投資先に与えることにより、より成功確度を上げる、一緒に事業を育てていくという関係性の深さによる愛着を感じる事も出来ます。
次にエンジェル投資家から投資を受ける際のメリット・デメリットを見ていきましょう。
エンジェル投資家から出資を受けるにあたっては、基本的なメリット・デメリットをしっかりと理解したうえで、出資してもらえるエンジェル投資家を探すことが重要です。
エンジェル投資家の4つのメリット
まずはメリットから紹介していきます。
銀行等による融資と異なり出資であるため返済義務や利息が生じない
金融機関から融資を受けると、毎月元本と利息を返済しなければなりませんが、エンジェル投資家からの出資を受ける場合は、元本、利息の支払いも一切必要ありません。
創業時に、返済義務がないお金を手に入れられることが、エンジェル出資を受ける最大のメリットと言えます。
返済義務がないとはいえ、多くの投資家の目的はあくまで最終的なキャピタルゲインを得ることです。
当然ながら起業家は投資家のキャピタルゲインを生み出すために、EXITを目指し事業を成長させていく必要があります。
出資までの判断が早い
エンジェル投資家からの資金調達は、調達にかかる時間が短いことが特徴です。
日本政策金融公庫は審査から融資まで最低でも1カ月、ベンチャーキャピタルの場合は数カ月かかることもあります。
一方、エンジェル投資家は自分の判断で出資を決めるので、決断がスピーディーです。
出資以外でもサポートをしてもらえる
エンジェル投資家は成功経験のある起業家など自分自身に成功実績がある人が多く、成功体験に基づく様々なアドバイスがもらえることも、大きなメリットのひとつです。
人脈が広がる
事業の一線で活躍している著名な人を紹介してもらえる場合があります。
エンジェル投資家は会社の成功のために、自分の持っている人脈を積極的に活用してくれるケースが多く見られます。
お金にはかえられないサポートをしてくれることもエンジェル投資家の魅力の一つと言えます。
エンジェル投資家の3つのデメリット
次にデメリットを見ていきましょう。
金融機関やベンチャーキャピタルに比べると出資額の規模が小さい
エンジェル投資家は自己資金による投資がほとんどで、出資規模は数百万円〜数千万円程度となるケースが多くなります。
大きな資金が必要な場合は、金融機関やベンチャーキャピタルにあたってみる必要があるでしょう。
事業に対して必要以上に干渉される可能性がある
エンジェル投資家の中には頻繁に口出し、細部に干渉してくる投資家も存在します。
エンジェル投資家は株主になるので、ある程度対応をすることも必要ですが、その対応に時間を取られすぎると、本来の業務に支障が出てくる場合があります。
エンジェル投資家との関係は個人対個人といったウエットな面があるため、気を使わなければならないケースも多くなります。
詐欺に気を付ける
エンジェル投資家を名乗り、起業家をだます事件も発生しています。
エンジェル投資家と名乗る人から「投資してあげるので事業をやってみないか」と誘われブラックなビジネスに手を染めてしまう事例もあります。
また、出資してくれた投資家が反社会勢力と関係がある場合、今後の経営やあなたの実績に悪影響を及ぼすことになります。
エンジェル投資家から投資を受ける際は冷静に相手を判断するようにしましょう。
エンジェル投資家の選び方
次にどのようにエンジェル投資家を選べばよいのか?その際の視点を述べていきます。
まずは、
- 経営者との相性が良さそうか
- 会社の成長に尽力してくれそうか
- 経営面でも頼れそうか
という視点で選ぶとよいでしょう。
経営者と出資者というお金の関係だけではなく、人と人との関係、「情」が介在するような関係になれる事がベストです。
これは甘えるという意味ではなく、お互いが成功に向けて良い協力体制を取れるかどうかという観点で考えて下さい。
仮にエンジェル投資家から投資を受け、事業を発展させていくとEXIT以外のときは、エンジェル投資家が一度得た株式を手放す可能性が低いといえます。
そのため、経営の方向性に意見の相違が出た場合、エンジェル投資家から株式を買い戻すことには困難がともない、できた場合でも労力・時間が必要になります。
会社運営の初期時点で関わってくるエンジェル投資家選びは慎重に行うことが必須です。
必ず熟慮して決めるようにしましょう。